3.水際対策のポイント:舌苔ケア

感染リスクを高める「舌苔」

口の中でも感染症にかかるリスクを高める要素といわれているのが「舌苔」です。舌苔は、舌の表面につく白い苔状のもので、口内の脱水や炎症などによって生じます。その正体は細菌や食べカスなど汚れの塊で、舌上に約1億いるといわれる細菌同士がコミュニケーションを取りながら膜状の集合体・バイオフィルムを形成しています。

「舌苔」の細菌が、
感染を促進する酵素
「プロテアーゼ」を産生!

舌苔には多様な細菌が約1億個も存在するといわれています。特に舌苔に多いカンジダ菌はバイオフィルムを形成しやすく、除去が難しいので要注意です。

口内の細菌の多さと感染リスクは直結しています。ガンジダ菌を始めとした、口腔内の細菌やカビの一種が産生するプロテアーゼというたんぱく質分解酵素は、粘膜のたんぱく質を壊し、隠れているウイルス受容体を露出させたり、ウイルス自身の表面に作用したりしていて、ウイルスの細胞への侵入・複製を助けるのです。従来の季節型インフルエンザは、本来は肺の細胞への侵入能力が弱いウイルスですが、プロテアーゼの関与で肺炎を起こすほどに重症化することもあります。舌苔の除去が感染症に有効であることは、高齢者の誤嚥性肺炎でも明らかになっています※1

※食物や唾液を誤嚥したときに病原性微生物も一緒に気管に入り込み、肺で炎症を起こす感染症
※1 奥田克爾,高齢者の静かなる暗殺者:口腔内バイオフィルムとの戦い,老年歯科医学/24 巻 (2009) 2 号/書誌

「舌苔ケア」で感染症の水際対策を

舌苔を放置しておくと、感染を促進するプロテアーゼの量が増えるので、感染症の発症や重症化を招きやすくなります。舌苔は舌の奥の方に付着しやすく、しかもバイオフィルムの状態になっていて取り除きにくいものですが、感染症を水際で防ぐために、舌苔を除去しましょう。

舌苔は、唾液量の減少や食べ物が口内に残ることで堆積しやすいため、年齢を重ねて口の機能が低下すると増えやすくなります。ただ、年齢に関わらず、歯磨き不足やストレスでも増加するものなので、舌苔ケアは老若男女に必要です。

基本的な「舌苔ケア」は、口の中を清潔にしておくこと。メジャーな舌苔ケアは専用の舌ブラシでこそぎ取る方法ですが、力の入れ過ぎで舌の粘膜を傷つけると、逆に舌苔が増えることもあり、使うのは意外に難しいかもしれません。手軽で継続しやすい洗口液や、アメ・タブレットなどに含まれる有効成分を上手に活用しましょう。また、アメやタブレットを食べると、口内で唾液の分泌も促すことができます。唾液には口内の細菌を洗い流し、清潔に保つ役割があるので、舌苔の予防にも役立ちます。

継続しやすい方法で習慣的なケアを心掛け、細菌にプロテアーゼをつくらせない工夫ができると良いでしょう。