オートファジー研究所 オートファジー研究所

ABOUT

オートファジーとNMN:若々しさを保つ2つの重要な要素とは?

私たちの身体は時間とともに老化していきます。しかし、その進行には個人差があります。この違いの背景には、細胞レベルでの重要な仕組みが関わっています。

最新科学が老化の謎に挑戦し続け、そのメカニズムが徐々に解明される中で、特に注目を集めているのがオートファジーという細胞のリサイクルシステムと、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)という成分です。

オートファジーとは?

オートファジーは、細胞内成分などを回収・分解し、その結果得られる分解物をリサイクルすることで細胞を正常な状態に維持する機構の一つです。オートファジーによって、細胞は新しく健全な状態を保ち、病気や老化のリスクを軽減することが知られています。

この働きが活性化することで、

  • ・健康長寿
  • ・老化防止(アンチエイジング)
  • ・免疫力の向上

などの効果が期待されます。

一方、オートファジーは年齢とともに低下し、その結果、老化や疾患のリスクが高まることがわかっています。

オートファジーが年齢とともに低下するイメージグラフ

>> オートファジーとは何か?UHA味覚糖が世界一わかりやすく解説

NMNとは?

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は老化抑制に効果があるとして知られる成分であり、2010年代に発表された一連の研究論文をきっかけに注目を集めるようになりました。これらの研究の多くは、動物にNMNを投与した時に、様々な老化現象を抑制する効果を示したものです。そして、2021年4月に世界で初めてヒトにおけるNMNの有効性を示した試験結果が発表され、その後、多くの臨床試験によりNMNの老化抑制効果が示されました。

NMNは体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質に変換されます。このNAD+は、エネルギー産生やDNA修復など、生命活動に関わる重要な役割を果たします。

NMNが体内でNAD+に変換される仕組みを図解しています。酵素NMNATによりNMNにアデニルモノヌクレオチドが付加されNAD+が生成される過程です。

NAD+が減少するとどうなるのか?

NAD+は、様々な代謝、DNA修復、細胞の生存などの調整に深く関与していますが、加齢とともにNAD+の量は減少することが知られています。NAD+の減少は細胞の機能低下を引き起こし、結果として老化や疾患につながる原因の一つと考えられています。

そして、減少したNAD+を細胞に補うと、低下した機能が回復することが分かりました。

そのため、NAD+を補うライフスタイルの工夫が、細胞をいつまでも若々しく保ち、健康長寿を目指す上での重要な鍵となるでしょう。

年齢とNAD+量の関係を示した棒グラフです。0-1歳で最も高いNAD+量が、年齢を重ねるにつれて減少し、70歳以上では大幅に低下することを示しています。

>> NAD+についてさらに知りたい方はこちら「NAD+が持つ役割」

オートファジーとNMN

老化や加齢に伴う疾患は、オートファジーとNAD+レベル両方の低下と関連付けられてきました。

一方、オートファジーとNAD+は、それぞれ異なる老化抑制メカニズムを持ちながら、相互に影響を与えることが明らかになっています。

最新の研究によると、細胞内で活性酸素が異常発生するなどの非常事態が生じると細胞は様々な防御反応を示します。その際、細胞内ではNAD+が大量に消費され枯渇してしまうことがわかっています。

その他にも、NAD+が枯渇してしまうようなときに、オートファジーが機能していると、細胞内でのNAD+の浪費を抑え、必要なエネルギーを確保することができるという働きも報告されています。

NMNはオートファジー活性を高める

また、最近の研究では、NMNがオートファジーの活性を高めることも分かっています。

これらをまとめると、NMNがNAD+レベルを回復させ、オートファジーを活性化し、オートファジーによってNAD+の浪費を抑制するという関係が見えてきます。

そして、NAD+が「エネルギー産生とサーチュインの活性化を促進」し、オートファジーが「細胞の中身をリサイクル」することによって、それぞれが老化抑制に寄与することがわかります。

>> サーチュインについてさらに知りたい方はこちら「NAD+のサーチュインの活性化による老化抑制」

オートファジー、NAD+、NMNの相互関係を示した図です。NMNがNAD+を増加させ、エネルギー産生やサーチュイン活性化、オートファジー促進を通じて老化抑制に寄与するメカニズムを図解しています。

◆参照文献
-Hansen, M. ∙ Rubinsztein, D.C. ∙ Walker, D.W.Autophagy as a promoter of longevity: insights from model organisms. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2018; 19:579-593
- Tetsushi Kataura, et al. Autophagy promotes cell survival by maintaining NAD levels. Dev Cell. 2022 Nov 21;57(22):2584-2598)(Quanjiang Zhang, et al. Control of NAD+ homeostasis by autophagic flux modulates mitochondrial and cardiac function. EMBO J. 2024 Feb;43(3):362-390.

オートファジーとNMNを活用するには?

オートファジーとNMNの関係を理解した上で、老化抑制、健康長寿のために私たちが実践できるポイントは以下のような例が挙げられます。

01オートファジーを促進するライフスタイル

  • ・適度な運動を行う
  • ・オートファジー活性を高める食品を摂る(ベリー類、納豆、赤ワインなど)
  • ・「腹八分目」を心掛ける
  • ・満腹状態で眠らない
  • ・オートファジー活性を高めるサプリメントを活用

02NMNを活用する

  • ・NAD+を補う食材を摂る(アボカド、ブロッコリー、枝豆など)
  • ・NMNを含むサプリメントを活用

まとめ

オートファジーとNMNは、それぞれ異なるメカニズムで老化を抑制しますが、相互に補完し合いながら、細胞の健康を維持する重要な役割を担っています。

  • ・オートファジーは細胞内のリサイクルを行い、細胞を常に正常な状態に保つ
  • ・NMNはNAD+を増加させ、細胞のエネルギー産生やDNA修復を助ける
  • ・オートファジーとNAD+は相互に影響を与えながら、老化抑制に貢献する

これらのメカニズムを意識し、オートファジーを促す生活習慣とNMNの活用を組み合わせることで、細胞レベルから健康と若々しさを維持することが期待できます。

NAD+について、さらに深く知りたい方は以下もお読みください。

NAD+が持つ役割

その1NAD+とエネルギー産生

私たちが日々の活動を維持するためには、エネルギーが欠かせません。このエネルギーを生み出すために、私たちの体内ではNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という補酵素(体内の化学反応を円滑に進めるために働く物質)が重要な役割を果たしています。

この仕組みを車のエンジンに例えると、食べ物が燃料(ガソリン)ミトコンドリアがエンジン、そしてNAD+はエンジンの歯車のような役割を担います。歯車の一つが欠けるとエンジンがうまく動かないのと同じように、NAD+の量が不足するとエネルギーの生産効率は低下します。

NAD+の働きをエンジンの歯車に例えて説明した図です。ガソリンがエンジンで動力となるように、栄養素やNMNから生成されるNAD+がミトコンドリアを活性化し、細胞内でエネルギーを産生する重要な役割を担っていることを示しています。

年齢とともにNAD+のレベルは減少することが知られており、その結果、ATPの産生量が減り、エネルギー不足が慢性化することが懸念されています。このため、NAD+レベルを維持することは、元気な生活を送るために重要なポイントとなります。

その2NAD+のサーチュインの活性化による老化抑制

NAD+はエネルギー産生に関与するだけでなく、老化の制御においても極めて重要な役割を果たします。その鍵となるのがサーチュインというタンパク質です。

DNA修復とサーチュインの役割

私たちの遺伝情報を担うDNAは、紫外線や放射線、酸化ストレスなどの影響を受け、日々損傷を受けています。DNAの損傷が蓄積すると、細胞の機能が低下し、老化や疾患のリスクが高まります。

DNA修復にはさまざまなメカニズムがありますが、その多くにNAD+が関与しています。また、NAD+サーチュインを活性化させる働きも持っています。

サーチュインが老化を抑制する仕組み

体内で重要な働きをしているタンパク質はアセチル化されると、その機能が変化します。

例えば、遺伝子を巻き付ける役割を持つヒストンというたんぱく質がありますが、特定の部分のアセチル化が起こると、まきつきが緩み、遺伝子が読み取られるという仕組みがあります。
しかし、老化した細胞では、不適切なアセチル化が進み、老化を促進するような遺伝子の読み取りが行われてしまいます。

サーチュインは、そのような不適切なアセチル基を取り除く、脱アセチル化を行うことで、細胞の健康を保つ役割を果たしています。

さらに、サーチュインの活性化は、

  • ・様々な代謝
  • ・DNA修復
  • ・細胞のストレス耐性

などを調整する効果をもたらし、結果的に老化の抑制に寄与すると考えられています。

サーチュインによる老化抑制の仕組みである脱アセチル化を説明した図です。通常の細胞、老化細胞、そしてサーチュインの働きによる細胞の正常化の3段階で、アセチル基とDNA読み取りの関係が図解されています。

>> 本記事の元の箇所「オートファジーとNAD+」に戻る