NAD+が持つ役割
その1NAD+とエネルギー産生
私たちが日々の活動を維持するためには、エネルギーが欠かせません。このエネルギーを生み出すために、私たちの体内ではNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という補酵素(体内の化学反応を円滑に進めるために働く物質)が重要な役割を果たしています。
この仕組みを車のエンジンに例えると、食べ物が燃料(ガソリン)、ミトコンドリアがエンジン、そしてNAD+はエンジンの歯車のような役割を担います。歯車の一つが欠けるとエンジンがうまく動かないのと同じように、NAD+の量が不足するとエネルギーの生産効率は低下します。
年齢とともにNAD+のレベルは減少することが知られており、その結果、ATPの産生量が減り、エネルギー不足が慢性化することが懸念されています。このため、NAD+レベルを維持することは、元気な生活を送るために重要なポイントとなります。
その2NAD+のサーチュインの活性化による老化抑制
NAD+はエネルギー産生に関与するだけでなく、老化の制御においても極めて重要な役割を果たします。その鍵となるのがサーチュインというタンパク質です。
DNA修復とサーチュインの役割
私たちの遺伝情報を担うDNAは、紫外線や放射線、酸化ストレスなどの影響を受け、日々損傷を受けています。DNAの損傷が蓄積すると、細胞の機能が低下し、老化や疾患のリスクが高まります。
DNA修復にはさまざまなメカニズムがありますが、その多くにNAD+が関与しています。また、NAD+はサーチュインを活性化させる働きも持っています。
サーチュインが老化を抑制する仕組み
体内で重要な働きをしているタンパク質はアセチル化されると、その機能が変化します。
例えば、遺伝子を巻き付ける役割を持つヒストンというたんぱく質がありますが、特定の部分のアセチル化が起こると、まきつきが緩み、遺伝子が読み取られるという仕組みがあります。
しかし、老化した細胞では、不適切なアセチル化が進み、老化を促進するような遺伝子の読み取りが行われてしまいます。
サーチュインは、そのような不適切なアセチル基を取り除く、脱アセチル化を行うことで、細胞の健康を保つ役割を果たしています。
などを調整する効果をもたらし、結果的に老化の抑制に寄与すると考えられています。